マラソンレース当日の栄養戦略:最高のパフォーマンスを引き出すために!
多くのランナーは、スタートラインに立つまでのトレーニングや日々の栄養に集中しがちですが、レース当日の栄養の重要性を見落としてしまうことがあります。しかし、目標タイムを達成したいのか、それとも胃の不調や「壁」にぶつかることなく完走したいのかによって、レース中に何をいつ食べるべきかは大きく異なります。だからこそ、レース当日の栄養戦略について理解していることが重要になります。
レース当日の栄養の目的
スタート時間の24〜36時間前からすでにカーボ・ローディングを終えていると仮定すると、レース当日の栄養の主な目的は以下の通りです。
- 肝臓と筋肉のグリコーゲン貯蔵を補充する
- 適切に水分補給を行う
- スタートラインで空腹感や過度の満腹感を感じないようにする
事前準備が成功の鍵
他のあらゆる栄養戦略と同様に、レース当日の栄養もトレーニング中に実践しておく必要があります。事前に自分の好みに合う食品を試し、食べたり飲んだりするタイミングを微調整しておくことでレースに対する自信を高め、パフォーマンスに良い生理学的影響を与えることができるでしょう。
レース当日に選ぶ食べ物は個人差がありますが、守るべき基本的な原則がいくつかあります。
レース前の食事
レース開始直前に大量の食事を摂ると、胃腸に不快感を与える可能性があるため、十分に早起きして朝食を摂るようにしてください。例えば、ロンドンマラソンのように開始時間が午前10時頃であれば、朝食は午前6時から7時頃に摂るのが理想的です。
朝食は、白米、うどん、トースト、果物など、炭水化物が豊富な食品を中心とすべきです。繰り返しになりますが、何を選ぶかはあなた次第です。自分にとって効果的なものを食べてください。もし移動する場合は、前夜に食事を準備し、出かける際に持っていくと便利でしょう。おにぎりは持ち運びに便利ですし、それに加えてフルーツジュースを飲むと、食事の炭水化物含有量を増やすことができます。
レース開始の1時間前に、体重1kgあたり0.5g~1gの炭水化物を摂取することを目指しましょう。体重が80kgの人であれば、これは120~240gの炭水化物に相当します。また、適度な量のタンパク質を含めることで、満腹感を得られるでしょう。ナチュラルヨーグルト、卵、ホエイプロテインシェイクは、どれも素晴らしい選択肢です。
ただし、高脂肪食品や高繊維食品を大量に摂取すると、消化に時間がかかり、レース中に不快感を与える可能性があるため、この食事では避けることをお勧めします。
レース前に緊張して固形物を消化するのが難しい場合は、スムージーなど、軽めの液体の食事が良いかもしれません。
スムージーのレシピ例:
材料
- ホエイプロテイン 1スクープ
- オートミール 50g
- バナナ(中サイズ) 1本
- はちみつ 大さじ1杯
- 水 300ml(お好みで牛乳も可)
作り方
- ブレンダーボトルに300mlの水を入れます。
- 材料を追加し、ミキサーにかけます。
- 好みのなめらかさになるまでブレンドします。
マクロ栄養素(目安)
- カロリー:434kcal
- 炭水化物:63g
- タンパク質:30g
- 脂質:4g
レース中の栄養補給
蓄えられた炭水化物はレース中に消費されるため、継続して補給を行うことを強くお勧めします。これは、エネルギージェル、エネルギードリンク、果物などの固形食、またはお好みに応じて炭水化物が豊富なエネルギーバーを摂取することで可能です。繰り返しになりますが、これはすべて個人的な好みです。
1時間あたり30~60gの炭水化物の摂取を目標にすることをお勧めします[1]。エネルギージェルには平均25g~30gが含まれているため、1〜2個で十分です。あるいは、これを食物から摂取したい場合は、大きなバナナ1本でほとんどのエナジーバーと同様に約30gの炭水化物を摂取できます。Lucozadeなどのエナジードリンクにも500mlあたり約30gの炭水化物が含まれているため、1時間かけてそれらを飲むこともできます。
レース当日は何も新しいことを試さないでください。理想的には、レース前の数週間にテストランを行い、スタートラインに立つときに最高の気分になれるものを見つけておきましょう。
水分補給の戦略
レース前の食事に続いて、水分補給は非常に重要です。レースの前と最中に水分補給を正しく行うことは、パフォーマンスを左右します。レースを開始する時点で脱水状態になることも、水分過剰になることも避けたいものです。
アメリカスポーツ医学会は、レースまでの2~4時間の間に、体重1kgあたり5~10mlの水を飲むことを推奨しています。したがって、体重80kgのランナーの場合、これは400~800mlに相当し、レースが始まる1時間前にさらに125~250ml飲むことになります。水分補給状態を監視する簡単な方法は、尿の色をチェックすることです。尿の色が薄い場合、これは水分補給が十分であることを示しています。色が濃い場合は、水分摂取量を増やす必要があります。
レース中は、15~20分ごとに125~250ml、または2~3回水を一気に飲むことを目指しましょう。これは気温と発汗量によって異なります。レース当日に気温が急上昇したり、汗をかきやすい場合は、上限を目安にすることをお勧めします。
食べ物と同じように、トレーニング中に水分補給を練習して準備し、最高に感じるのにどれだけの水分を摂取すべきかを十分に理解することをお勧めします。また、発汗によって失われた塩分を確実に補給するために、ナトリウムレベルを考慮することも重要です。これは、レース中にエネルギードリンクまたはジェルを摂取することで可能です。これらのほとんどには電解質が含まれていますが、念のために事前に確認しましょう。
サプリメントの活用
栄養と水分補給に続き、最後に考慮すべきはサプリメントです。カフェインは、最も研究されているエルゴジェニックエイド(運動能力向上剤)の一つであり、持久走のパフォーマンスを向上させるために広く使用されています[2]。
持久力のパフォーマンスを高めるには、体重1kgあたり1~3mgの低~中用量のカフェインで十分と考えられます[3]。カフェインは摂取後わずか15分で血流に入り、摂取後1時間でピークに達するため、レースの開始前の1時間以内にカフェインサプリメントを摂取するようにしましょう。その後、レースの終わりに向けて補充することで、最終ステージをパワーアップすることができます。これを摂取するのは約60〜90分が適切な時間です。したがって、目標時間が4時間の場合は、約3時間の時点で摂取すると良いでしょう。
150~300mgのカフェインを含むカフェインサプリメントが適切な用量であり、これは、2~3回分のOptimum Nutrition Amino Energyなどのドリンク、またはコーヒーを飲みたい場合は1杯のダブルエスプレッソでも摂取できます。カフェイン錠がお好みの場合は、4-8プロプラスをお試しください。レース中は、カフェイン配合のエネルギージェルをお勧めします。
これらには、1回分あたり75mg~150mgのカフェイン、または1個あたり100mgのカフェインを含む1~2個のカフェインガムが含まれています。繰り返しになりますが、これは個人のカフェイン耐性と体重によって大きく異なるものなので、レースに至るまでのトレーニングで何が効果的かをテストすることをお勧めします。
レース後の回復
レース後、お祝いに出かける前に、失った水分を補給する必要があります。脱水症状の兆候には、激しい頭痛、筋肉のけいれん、極度の倦怠感などがありますが、どれも心地よいものではありません。レース後の最初の30分間に少なくとも500mlを飲み、その後、尿の色が薄くなるまで、5~10分ごとに水分を摂り続けましょう。
また、体重1kgあたり1~1.2gの炭水化物を摂取すると、枯渇したグリコーゲン貯蔵を補充できます[4]。そして、筋肉の回復を助けるため、少なくとも20gのタンパク質を摂取するようにしましょう。これは、例えば1パイント(約500ml)のチョコレートミルクと大きなバナナ1本で簡単に摂取できます。
ヒントのまとめ
貯蔵エネルギーを補充するために炭水化物が豊富な朝食で一日を始めましょう。レースの前は1時間ごとに体重1kgあたり0.5g~1gの炭水化物を摂取しましょう。
カフェインは、認知機能とエネルギーを助ける効果的なエルゴジェニックエイドです。レース開始の15分から1時間前に体重1kgあたり1~3mgを摂取するのが最適です。
発汗によって失われた水分と塩分を飲料水と炭水化物-電解質溶液で補充することにより、レース中の水分補給を維持しましょう。15~20分ごとに2~3口の水を飲みましょう。暑い日や汗をかきやすい場合は少し多めに飲んでください。
レース中は、ドリンクやジェル、または好みに応じて食べ物で、炭水化物を1時間あたり30〜60gの割合で摂取しましょう。
レースに至るまでのすべての栄養戦略を試して、何が効果的かを確認しましょう。
注意:
この記事は教育のみを目的としています。これはGlanbia Performance Nutritionの意見を反映したものではなく、製品のマーケティングを目的としたものでもありません。
参考文献:
Jeukendrup, A. et al. (2014). A step towards personalized sports nutrition: carbohydrate intake during exercise. Sports Med, 44, S25–S33.
Graham, T. E. et al. (1991). Performance and metabolic responses to a high caffeine dose during prolonged endurance exercise. Journal of Applied Physiology, 71, 2292-2298.
Goldstein, E. R. et al. (2010). International society of sports nutrition position stand: caffeine and performance. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 7, 5-20.
Ivy, J.L. (1998) Glycogen Resynthesis After Exercise: Effect Of Carbohydrate Intake. International Journal Sports Medicine, 142–5.

